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韓国とウェルビンとトマト

韓国ドラマ「トマト」

2003年に日本で「すいか」というドラマが放送されました。ドラマのタイトルがなぜ「すいか」なのかというと、夏に放送され、すいかがでてくるシーンが多かったからだという記事を読んだことがあります。
それに対抗するわけではないのでしょうが、韓国では1999年に「トマト」というドラマが放送されました。私が韓国で暮らし始めた頃にこのドラマが再放送されていて、ちょうどいいことに日本語の字幕つきだったので、韓国語の勉強のためによく観るようになりました。
韓国ドラマ「トマト」は、田舎から上京してきたヒロインが靴のデザイナーを目指し様々な困難を乗り越えた末に夢を実現させ、憧れていた男性とも両想いになるというシンデレラストーリーですが、私はこのドラマを観るたびにいつも疑問に思うことがありました。
「どうしてドラマのタイトルがトマトなんだろう?」
トマトの品種改良に燃えるヒロインが登場するわけでもなく、トマトのレシピを考案するわけでもありません。しいて言うなら、ヒロインが自宅のアパートでミニトマトの鉢植えを育てていて、鉢植えに水をやっているシーンがでてくるというくらいのものです。ドラマの内容とトマトとの関連性が全くないように思えたのですが、しばらく観続けているうちにふと思ったことがありました。
韓国ドラマ「トマト」では、ヒロインが様々な困難に見舞われ、傷ついたりピンチに陥ることが多いのです。そんなヒロインをアパートで待ってくれているのは、家族でも恋人でもなくミニトマトの鉢植えだけです。ミニトマトの鉢植えはその真っ赤な色でヒロインをなぐさめているかのようでした。ミニトマトの鉢植えが置いてある部屋でヒロインは傷ついた心と体を癒し、また次の日には元気になって前進していく・・・というのがドラマの見せ所でした。それで私は、このドラマのタイトルは「パプリカ」でも「ブロッコリー」でもなく、「トマト」でなければならないと思ったのでした。
ドラマ「トマト」は最高視聴率50パーセントを記録し、ヒロインが部屋で育てていた「ミニトマトの鉢植え」は、ヒット商品としてしばらくの間、韓国で流行していました。

トマトは野菜なのか?果物なのか?

トマトは野菜なのか、果物なのかと聞かれたら、ほとんどの日本人は「野菜」だと答えることでしょう。私も20年以上、当たり前のようにトマトは野菜だと思っていました。そんな私の「トマト=野菜」常識が覆されたのは、韓国人の夫と結婚して韓国で暮らしはじめてからのことです。
初めて夫の友人宅を訪問した時のことです。コーヒーと一緒にガラスの器に輪切りにされたトマトが載って出てきたのです。お客様へのおもてなしの一品にケーキでもなく、おまんじゅうでもなくトマトを出すというのが不思議でした。さらに驚いたことに、トマトには砂糖がかけられていました。夫や周りの韓国人たちは、ごく自然な様子で食べ始めました。
「どうして食べないの?トマト、好きじゃない?」
夫の友人の言葉に全く手をつけないのも失礼かなと思い、恐る恐るフォークでトマトを突き刺して、口に運んでみましたが、不味くはないけど微妙な味・・・それが最初の感想でした。
一度、夫になぜトマトに砂糖をかけて食べるのかと聞いてみたことがあります。韓国ではトマトは果物なので、甘くして食べるという返答でした。そういえば、韓国で売られているトマトジュースはとても甘く、日本のトマトジュースの味を想像していた私はとても驚いたことがあります。そして、韓国のトマトはスーパーや市場の野菜売り場ではなく、果物売り場に当たり前のように置かれているのです。
トマトの砂糖がけよりも衝撃的だったのは、ケーキのトッピングにミニトマトが使われていたことです。初めて見た時は、イチゴの間違いではないかと思いましたが、どう見てもそれはミニトマトでした。生クリームのケーキに、まるでイチゴのようにミニトマトがデコレーションされていたのです。しかも鮮やかな緑色のヘタつきで。
ケーキのほかにも、パッピンス(韓国のかき氷)にミニトマトがトッピングされていることがあります。また、私の知り合いの料理好きの女性はトマトのキムチを作るそうです。固めのトマトに包丁で十字に切り目を入れて、そこにキムチのヤンニョムを詰めるだけで、トマトキムチの完成です。他のキムチよりもさっぱりとして美味しいといいます。

ウェルビン生活とトマト

日本と同じように、韓国でもトマトの効能について、広く知られています。トマトに含まれるリコピンという成分は抗酸化作用が強く、様々な病気を予防できるといわれています。テレビの某健康番組では、リコピンは男性の不妊に効果的で精子の運動率をあげてくれるため、妊活中の人にいいと解説していました。また、リコピンは免疫力の弱っている人や抵抗力の弱い赤ちゃんにも効果があるということです。
2000年代半ばから、韓国では健康志向の人が増えており、健康食としてトマトの生産高は年々増加しています。こういった健康志向のことを韓国では「ウェルビン」といい、一時は「ウェルビンブーム」が起こって、健康に関連したテレビ番組が人気を集めました。某健康番組でトマトの効能やレシピが紹介された翌日には、スーパーや市場でトマトの売れ行きが伸びるという現象まで起こったのです。トマトは韓国のウェルビン生活にも一役買っていた存在なのです。

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